井戸から水が出なくなったときに対処法としてよく耳にするのが呼び水です。しかし、呼び水とは具体的に何を指すのでしょうか?次の章では、呼び水の意味とその役割について詳しく紹介します。
呼び水とは、ポンプ内部と手で押す部分の管を水で満たすことです。通常ポンプは、内部を水で満たして使用します。内部に空気が入っていると水をうまく吸い上げられないため、ポンプの使い始めやトラブル発生時に必要な作業です。
呼び水を行うことで水を吸い上げられる理由は、液体と気体の性質の違いを利用しているためです。ポンプは本来、管内の空気を完全に排除して真空に近い状態を作り出すことで、空気と水の圧力差を生み出し水を吸い上げます。もし管内に空気が入っていれば、ポンプの手押し部分を動かしても内部の空気が膨張や収縮するだけで、力が水にうまく伝わらず汲み上げはできません。
ポンプ内部を水で完全満たすことでポンプ内部と外部の圧力差を作り出し、井戸の水を吸い上げができるというわけです。この呼び水のポンプの仕組みは、大気圧を利用して水を引き上げる揚水の原理に基づいています。
井戸ポンプから水が出なくなる原因は5つあります。水が出ない原因を特定した上で、それぞれ対処していくことが重要です。
地下水の水位の低下は、ポンプから水が出ない原因の一つです。通常ポンプの吸水管の中には、一定以上の水が溜まっています。しかし、地下水位がポンプで吸い込み可能な範囲を下回ると、ポンプが水に届かず空気だけを吸い込み、ポンプから水が出てこない状態になります。
この場合、地下水位の確認して水位が下がっていることを確認できても、すぐにできる対処法は水位の回復を待つしかありません。少し待ったうえで水位が増えたことを確認できれば、改めてポンプを使用してみましょう。もし、しばらく待っても水位が回復しないのであれば、元の地下水位自体が低下している可能性が高いため、ポンプの深さ調整や再設置が必要となります。
呼び水が少ないことも、ポンプから水が出ない原因として考えられること一つです。基本的に吸水管には常に呼び水が溜まっており、いつでも吸い上げができるようになっています。しかし、何らかの理由で内部が空気が入ってしまうと吸い上げる力を発揮できず、ポンプから水が出てこない状態となります。後ほど詳しく紹介しますが、この場合は呼び水を追加して対処しましょう。
冬場の寒い時期に起こる吸水管の凍結も、ポンプから水が出なくなる原因として挙げられます。凍結によって水が氷になり、配管内の水の流れを遮断してしまうためです。特に、寒冷地や冬の時期に気温が-4℃以下になると吸水管は凍りやすく、ポンプが正常に動作しなくなることがよくあります。
吸水管が凍結している場合は、基本的に無理に解凍しようとせず気温が上昇して自然解凍されるのを待ちましょう。すぐに水を使う必要があるときは50℃ほどのお湯やヒートガン、ドライヤーを使ってゆっくり解凍しましょう。
すぐに水道を使用したいときには吸水管の凍結している部分を温めて解凍します。まずは乾いたタオルを凍結部分に巻き、50℃ほどのお湯をゆっくりかけてください。氷が溶けて水が出るようになったらタオルを外し、乾いたタオルでしっかりと水気を拭き取って再凍結しないようにしてください。
凍っている給水管を急激に温めると破損するおそれがあります。熱湯の使用は避け、50℃ほどのお湯を利用してゆっくりと温めて凍結を除去しましょう。また、解凍後にしっかりと水気を切らないとその水分が冷えることで再度凍結してしまう原因となります。
また、吸水管を温めるためにヒートガンやドライヤーを使用するのも有効です。こちらも急激な温度変化を防ぐためゆっくり作業をしてください。
積雪地域など、凍結が毎日発生するほど寒い場所では、凍結防止のヒーターや保温材を吸水管に巻きつけての予防が効果的です。
最近の井戸ポンプは凍結防止対策がされているものが多いです。電源を切らなければこれが作動をして凍結を予防してくれるので使用しないときも電源を入れておくことをおすすめします。
吸水管が詰まっていると、ポンプから水が出なくなることもあります。井戸や地下水を使う環境では、砂や泥、石、さらには水中に浮遊する小さなゴミなどが原因となって詰まりが発生することがよくあります。吸水管の詰まりは、ストレーナー(フィルター)にゴミが挟まっていたり、管内に泥や砂が堆積している場合が多いです。
詰まりによって吸引力が低下し、水をポンプ内に吸い込めないため、ポンプいくらを動かしても水が出ない状態は故障の原因となることもあるので無理に使用を続けないようにしましょう。吸水管が詰まっている場合の対処としては、以下の方法が有効です。
吸水管の先端についているストレーナー(フィルター)が汚れやゴミで詰まっている場合は、取り外して清掃しましょう。水圧やブラシを使って汚れを除去できれば、正常に吸水管が使用できます。
吸水管内に泥や砂が詰まっている場合は、配管の内部を洗浄する必要があります。洗浄機や高圧洗浄ホースを使用して、水圧で詰まりを押し出す方法が最も有効です。高い水圧のホースがなくても定期的に行えば、詰まりを防ぐことも可能です。
詰まりがひどく洗浄や清掃で解消できない場合は、吸水管自体を交換するのも選択肢の一つです。配管は古くなれば詰まりやすく、漏れトラブルが起こることもあるため、専門業者に相談して交換を検討しましょう。
水を汲み上げるポンプ自体が故障していると、当然ながら水は出なくなります。ポンプの機械部分は消耗品です。時間の経過とともに摩耗や劣化が進み、性能はどんどん低下します。ポンプの寿命は10年程度と言われているため、10年以上使用しているものに不調が生じてきたら修理や清掃などではなく、交換を検討しましょう。
ここからは、ポンプの呼び水のやり方を紹介します。対処法を知っておけば、いざポンプから水が出なくなったときに対応できますので、参考にしてください。
呼び水で水をポンプ内部に注ぐ前に、まずはポンプの電源を切った上で電源プラグを抜いておきましょう。呼び水の作業の最中に予期せぬポンプの動作があれば、作業を安全に行えなかったり、モーターなどの機械が空回りして故障の原因にも繋がる可能性があります。呼び水を行う際は、必ずポンプが動作できない状態にしておくことが大切です。
ポンプに設けられている呼び水口のプラグを外し、水を注ぎます。ポンプの種類やサイズによって注ぎ方や入れる水の量は異なりますが、この時少し水が溢れる程度までしっかり水を入れると、内部の空気抜きが十分にでき、ポンプもうまく作動できます。水を溢れる程度まで注ぐことを考えて、周囲に水濡れができないものを置かないようにしておきましょう。
呼び水をしっかりと注いだら、電源プラグを差しましょう。「エア抜きバルブ」が取り付けられている製品の場合は、このバルブを開いて配管内に残っている空気を外に逃がします。バルブがない場合は、ポンプの上部や配管の一部に空気が溜まりやすい部分があり、そこから空気を排出するため完全に空気が抜けるのを待ちましょう。エア抜きバルブから空気が出なくなる、あるいはポンプから安定して水が出てくるようになったら完了です。
呼び水を自分で行う場合に気をつけるべきことを合わせて紹介します。
呼び水を行う際は、必ずポンプの電源を切っておきましょう。電動ポンプが作動している状態で呼び水を行うと、水を注いでいる途中で突然ポンプが動き出す可能性があります。作業途中でポンプが動き出してしまえば、水が不意に飛び散ったり、配管を破損する危険性があります。
また、空気がポンプ内部に大量に入り込めば、摩擦が生じて過熱やトラブルが発生する可能性もあります。呼び水を安全かつ確実に行うためには、ポンプが完全に静止した状態にするためにしっかり電源を切り、準備を整えてから行うことが大切です。
呼び水を行う際に意外と見落としがちですが、水温にも気を付けましょう。温度が低すぎたり高すぎたりすると、ポンプや配管に悪影響を及ぼす可能性があります。水温が低すぎる場合、冷たい水は粘度が高まるため、ポンプが水をスムーズに吸い上げることが難しい場合があります。
特に冬場は、かなり低い温度の水が配管内やポンプを通ると、部品に過度な負担がかかり、凍結や詰まりの原因に。一方で、温度が高すぎる水を使用することも、熱い水がポンプや配管の素材にダメージを与えるおそれがあるため厳禁です。
呼び水に使用する水の適温は、10℃~25℃程度の常温水にしましょう。常温の水は、冷たすぎず熱すぎず、ポンプや配管に優しいためトラブルが発生する可能性も低くなります。適切な温度の水を使用すれば、ポンプの寿命を延ばすことも期待できるため、呼び水の際は必ず常温水の使用を意識しましょう。
ポンプを稼働させる際の空気抜き作業は、何よりも重要な工程です。ポンプや配管内に空気が残っていると、水圧が十分にかからないため、正常に水の吸い上げができません。結果として、ポンプが空回りしてしまい、水が出てこないまたは水圧が極端に低下する原因となります。
また、空気を内部に残したまま稼働させていれば、摩擦が発生し、過度に熱を持った部品が破損する可能性もあります。空気抜きを怠れば、ただ水が出にくくなるだけではなく、最終的にはポンプや配管の損傷を引き起こす可能性があるため、呼び水後には必ず空気を完全に抜いてから運転を開始することが大切です。
上記で紹介した対処法や呼び水を手順通りに行っても水が出ない場合は、ポンプの故障が疑われます。ここからは、ポンプの交換や修理が必要なケースについて紹介します。
呼び水をしても水が出ない場合、ポンプや配管に問題がある可能性が考えられます。このような場合に、無理してポンプを使い続けると、さらに故障や破損を引き起こすおそれがあるため、速やかに水道業者に相談することをおすすめします。プロの技術者がポンプや配管の状態を診断し、適切な修理やメンテナンスを行ってくれるため、安全かつ安心にポンプの修理ができる方法です。
ポンプから水が出ない場合、故障が原因であることも多いですが、修理や部品交換で対応できるケースもあります。ポンプの故障原因には、モーターの不具合、パッキンやバルブの劣化、吸水管や配管の詰まり・破損などさまざま。すべての故障がポンプ全体の交換が必要というわけではないので、部品の交換や簡単な修理で済むことも多くあります。部分的に交換や修理すれば、費用も抑えられます。
具体的な修理費用の相場としては、軽度な部品交換なら5,000円~10,000円程度、中程度の修理で15,000円~30,000円程度、大きな修理が必要になるなら30,000円~50,000円程度が目安です。ただ、修理費用はポンプの種類や故障の程度によって大きく異なるため、事前に見積もりを依頼しましょう。
ポンプが故障している場合、修理で対応できるケースもありますが、故障の状況によってはポンプ全体の交換の方が良いこともあります。特にポンプの耐用年数に近い期間使用している場合や、モーターなど主要の部品に深刻なダメージがある場合。修理をしてもすぐに再トラブルが生じる可能性も高く、交換の方が長期的に見てコストと手間を省けることも多いです。
種類にもよりますがポンプの交換費用は40,000円以上、耐用年数は一般的に10年~15年と言われています。これ以上長い期間使用していると、あらゆる部分にガタが来て頻繁にトラブルが発生することもあります。また、古いポンプの型であるほど部品が入手しづらくなり、修理のコストや手間が増えることも。耐用年数に近い場合や過ぎている場合には、修理ではなくポンプ自体を交換する方がおすすめです。
この記事では、呼び水のやり方や、ポンプから水が出なくなる原因について解説してきました。呼び水は、ポンプが正しく水を吸い上げるために大切な作業であり、水温や空気抜きの手順をしっかり守ることが欠かせません。また、地下水位の低下や吸水管の凍結、詰まり、さらにはポンプ自体の故障が原因で水が出なくなることもあります。こうした場合、対処法や修理、部品交換で対応できることもありますが、ポンプの状態によっては交換が必要となるケースもあります。
呼び水の作業に不安がある方や、故障の可能性を感じている方は、無理に自分で対処せず、専門業者に相談することがおすすめ。プロのアドバイスを受ければ、面倒なポンプトラブルも安心かつ安全に解決できます。
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