汚水桝・排水桝とは、排水管同士を接続するためにあり、家庭の排水には欠かせない設備です。汚水桝は排水管の点検口としての役割と、排水に含まれるゴミや油分などの異物を分離するための役割を持っています。汚水桝があることで家庭から下水の方に流れていく排水管の詰まりを防ぎ、スムーズに水が流れるようにしているのです。トイレ用やキッチン用など、排水場所に1つずつ汚水桝があり、1軒につき3カ所ほどの汚水桝があるのが一般的です。
汚水桝は家の敷地内に埋まっています。小さなマンホールのような形で「おすい」と書かれている塩ビ製のタイプが主流ですが、古い住宅では四角いコンクリート製の桝が使われていることも。しかし、汚水桝の掃除・メンテナンスを定期的に行っている人は少なく、その存在を意識せずに生活している人も多いでしょう。
汚水桝には主に以下4つのタイプがあります。
ここでは、各家庭で管理・メンテナンスする必要がある「インバート桝」、「溜桝」、「雨水桝」の3種類について、くわしく解説します。
インバート桝は、トイレの排水に使用されるタイプの汚水桝です。インバートとは建築用語で、アーチ状のものをひっくり返した形状を指します。その名前の通り、底面には逆アーチ形の溝が設けられており、排水に含まれる排泄物やゴミがこの溝にたまることで、排水が詰まらずに流れます。「溜桝」とは異なり水が流れていない時には水が溜まらず、底面の溝が見えている状態が正常です。
溜桝は、お風呂やキッチンなどの排水先に設置される汚水桝です。別名「会所桝」や「トラップ桝」と呼ばれることもあります。
溜桝には深さがあり、その名前の通り常に水が溜まっている桝です。桝の中に常に水があることで、排水が流れ込んできた時に油分は浮かせ、固形物は底に沈ませる構造になっています。
溜桝の下流側の配管には「エルボ」と呼ばれる曲がった配管が桝の底面に向かって取り付けられています。配管の先端は水に浸かっており、排水が流れ込んできた時に油などの異物を取り除いた水だけを下流に流せる仕組みです。
雨水桝は、家の敷地内に降った雨水を集めるためのバケツ状の桝で、浸透式と非浸透式の2種類があります。
浸透式の雨水桝は、桝の側面や底面に小さな穴がたくさん開いているのが特徴です。浸透式の雨水枡の中に溜まった雨水は、桝の中に敷き詰められた小石や砂利でろ過されて徐々に地面に浸透していくので、「浸透式」と言います。もし豪雨や台風などで雨水が桝の容量以上の雨水が流れてきた場合には、桝に取り付けられた排水管を通って道路の側溝や下水管に排出される仕組みです。
非浸透式の雨水桝には穴があいておらず、集めた雨水を道路の側溝や下水管に流しています。雨水の処理方法は地域によって異なり、集めた雨水を河川や海に流している地域もあれば、汚水と一緒に下水管に流している地域もあります。
浸透式・非浸透式どちらも使用とともに桝の中に泥や落ち葉が溜まっていきます。泥や落ち葉をそのままにしていると、桝から雨水が溢れる原因になります。梅雨や台風シーズンなど雨の多くなる季節の前に、落ち葉や泥が溜まっていないかチェックしましょう。もし溜まっていたら、スコップで取り除くだけで簡単にメンテナンスできます。
汚水桝の掃除は、定期的に行うのが基本です。掃除をせず放置してしまうと、排水管が詰まって水まわりトラブルが起こるリスクが高まり、日常生活に支障をきたす可能性があります。
ここでは、汚水桝の掃除頻度や、排水管が詰まると起こり得るトラブル、排水管詰まりを防ぐために日頃からできる対策を説明します。
汚水桝の掃除は、半年に1回ほどの頻度で行うのが理想です。汚水桝は定期的なメンテナンスが前提の構造なので、掃除をしないと汚れが溜まり、排水がスムーズに流れなくなる可能性があります。自分で掃除をする場合、汚れがひどくなる前に掃除をした方が負担が少なくて済みます。
ただし、汚水桝の適切な掃除の頻度は家庭のライフスタイルによって異なるため、自分たちの生活にはどれくらいの掃除頻度が合っているのかチェックするのがおすすめです。
例えば同じ4人家族の家庭だとしても、両親の在宅勤務が多いのか出社が多いのかで汚水桝の汚れやすさが変わってきます。在宅勤務が多い場合だと家のキッチンやトイレを使う頻度が高く、それだけ汚水桝の汚れが溜まりやすい環境だと言えるからです。また、子どもがスポーツをやっていて洗濯の頻度が多かったり、毎日料理をして油を使う頻度が多かったりすると、半年に1度の掃除でも追いつかない場合もあるでしょう。
まずは半年に1度ほどを目安に汚水桝の掃除を行い、汚れの度合いを見て掃除の頻度を調節するのがおすすめです。汚水桝の掃除は、汚水桝の蓋を外して中に溜まった汚れを取り除けばいいので、軽度な汚れなら自分でも問題なく対応できます。くわしい掃除方法や準備するものは、後の見出しで解説します。
汚水桝を掃除しないと、排水管のつまりにつながります。特に油汚れや排泄物は、少しずつ管内にこびりついていき、やがてつまりを引き起こします。特に気温の低い冬場は油が固まりやすく詰まるリスクも高まるため、注意が必要です。
排水管が詰まると排水が流れて行かず逆流が起こり、水まわりが全て使えなくなってしまいます。それだけでなく、逆流した汚水が溢れて床が水びたしになってしまうケースも多いです。
また、排水管を掃除せず放置すると、他にも悪い影響があります。悪臭が家の中や汚水桝の周辺に漂い始めたり、ハエやゴキブリなど不快害虫の発生原因となったりします。特に汚水桝からの臭いが近隣に漂い始めると、近所の人に迷惑をかけてしまい、無用なトラブルにまで発展することがあるので、放置は厳禁です。
汚水桝や排水管のつまりを防止するには、日常的にゴミや油汚れをなるべく下水に流さない心がけが大切です。流す汚れが少なければ、それだけ排水管の中や汚水桝にこびりつく汚れも少なくなるので、掃除頻度も減らせます。
具体的な対策は、食器を洗う際には排水口にゴミ取りネットを設置して、食品カスや細かいゴミが下水に流れないようにしましょう。ゴミ取りネットは100円ショップやスーパーでも販売しているので、すぐに手に入ります。特にキッチンの排水口には目の細かいストッキングタイプやネットが二重になっているタイプを使うと、細かい食品カスまでしっかりキャッチできます。
お風呂もキッチンと同じく排水口にネットをかけるのがおすすめです。備え付けの排水口の網では髪の毛やホコリをキャッチするのに不十分なこともあるためです。お風呂の排水口ネットも、100円ショップやスーパーで購入できるので、手軽に手に入ります。
洗い物をする際に、なるべく油を排水口に流さない工夫も重要です。料理をした後のフライパンやご飯を食べた後のお皿に残った油汚れは、排水管内や汚水桝にこびりつく汚れの原因です。お皿やフライパンを水につける前にキッチンペーパーで残った油分を拭き取り、ゴミとして捨てましょう。排水口に流す油の量が少なくなるので、こびりつく汚れも少なくなります。
トイレにものを流す時も注意が必要です。例えば、トイレの掃除シートなどで、「水に流せる」と書いてある商品だとしても、流すと排水管のつまりの原因になることがあります。ゴミに捨てても問題ないものはゴミとして出し、可能な限りトイレに流さないようにしましょう。また、トイレットペーパーも同様で、流しすぎると排水管や汚水桝で詰まる原因になります。一度に大量のトイレットペーパーを流さないように気を付けましょう。
汚水桝の掃除方法と、掃除に必要な道具や掃除を行う際の注意事項も合わせて紹介します。汚水桝の掃除には準備するものが多く、注意すべきことも多いです。掃除を始める前に内容をチェックして、しっかり準備してから取り掛かりましょう。
汚水桝を掃除する時に準備する道具は、以下の通りです。
汚水桝を開けると、強烈な悪臭が漂います。臭いをガードするためにも、マスクをするのがおすすめです。また、汚水桝の中に溜まった汚れは不衛生なので、手に付かないいようにしっかりゴム手袋を着用して掃除しましょう。
汚水桝の掃除には特に専用の道具は必要ないので、家に代用できそうな道具があれば代用しても買いません。例えば、マイナスドライバーは、排水桝の蓋にひっかけて開けるために使用するものです。他に蓋にひっかけられる道具があれば、それでもOKです。
ひしゃくは、汚水桝に溜まった沈殿物や油汚れを取り除くために使います。もし油が固まっていてひしゃくで取るのが難しそうな場合、園芸用のスコップを使うと掃除しやすいのでおすすめです。
周囲が汚れないように養生するためのビニールシートは、新聞紙や大きいゴミ袋でも代用できます。排水管内の汚れを落とす際は、高圧洗浄機を使えば効率的に落ちるのでおすすめですが、用意できない場合は散水ホースでも汚れを落とせます。
また、汚水桝の掃除には洗剤を使用する必要はありません。しかし、洗剤を使用してブラシなどで徹底的にきれいにしたい場合は、台所用の中性洗剤を使うのがいいでしょう。
汚水桝の掃除をする際は、以下の通り3つの注意点があります。
特に長く掃除をしていないままの汚水桝の場合は、蓋を開けると強烈な悪臭が発生します。近隣に何も言わずに掃除をすると迷惑になったり驚かせてしまったりする可能性があるので、掃除の前に近隣の住宅に一言声をかけておくと良いでしょう。
汚水桝の掃除の際は中の固まった油汚れや堆積したヘドロが飛び散ります。注意を払っていたとしてもいつのまにか服についてしまう可能性も高いため、汚れても問題ない服装で掃除を行うのがおすすめです。
散水ホースや高圧洗浄機を使用して排水管の中を洗浄する時は、水圧に気を付けてください。勢いよく水を流しすぎると汚水が排水管を逆流して、家の中で汚水が溢れる可能性があります。あまり威力を強くしすぎず、少しずつ汚れを取り除くようにしましょう。
汚水桝を掃除する手順は大きく以下の7つに分かれます。それぞれの工程について、くわしく解説します。
汚水桝の掃除を始める前に周囲の壁や地面など、汚したくないものをビニールシートや新聞紙、ゴミ袋などで覆います。汚水桝から飛び散った汚れは、一度ついてしまうとなかなか落ちない可能性があるので、養生を行った方が安心です。養生が終わったら、汚水桝の蓋の縁の隙間にマイナスドライバーを差し込み、てこの原理を利用して蓋を開けます。
次に、汚水桝の中に浮いたりこびりついたりしている油汚れをすくい取り、ざるで水分をよく切ってゴミ袋に入れます。固まった油汚れはスコップを使って割ってからすくうと上手く取り除けるでしょう。
油の塊が取れたら、「エルボ」と呼ばれる配管を取り外してください。エルボは下水管側についている曲がった管で、桝の中に溜まった水に管の先が浸かっています。エルボを外すのには特別な器具は必要なく、手で掴んで軽く左右に動かせば簡単に外れます。ただし、汚れで固まって取れない場合は無理に動かして外そうとせず、エルボがついた状態で次の手順を行ってください。
次に、汚水桝の底に沈殿した汚れをひしゃくやスコップで取り除き、水を切ってゴミ袋に入れます。その後、高圧洗浄機か散水ホースを使い、下流側から上流側に向かって水を流して排水管の中の汚れを落としていきます。排水管の中から出てきた汚れをなるべくきれいにすくい取り、ゴミ袋へと入れましょう。最後に、エルボを元の位置に取り付けて汚水桝の蓋を元に戻したら、汚水桝の掃除は完了です。
汚水桝の掃除を業者に依頼した場合の費用相場について紹介します。汚水桝の掃除やメンテナンスは、自分でやる意外に水道業者に依頼することもできます。
汚水桝の掃除が面倒だと感じている人や、長年放置してしまった人、掃除が大変だと感じている人には、水道業者への依頼を検討しましょう。
通常の汚水桝清掃にかかる費用の相場は、作業費や出張費などを含めて15,000円ほどです。トラブルの起きていない状態の定期的なメンテナンスであれば、作業時間は20分ほどで完了することが多いです。
汚水桝のメンテナンスを水道業者に依頼すると、プロがしっかりとチェックするので水道管全体の不具合にも気づきやすくなるメリットがあります。定期的に汚水桝や排水管のメンテナンスを受けていれば水まわりのトラブルを未然に防げるでしょう。
もし排水管が詰まってしまった場合は、3万円以上と高額な費用がかかることがあります。状態がひどいと高圧洗浄機など特殊な機器を使用して大掛かりな作業が必要となるためです。
汚水桝周辺の状況や排水管・汚水桝の状態によっては、補修や排水管自体の交換など手間のかかる作業が必要になるケースもあります。作業が複雑になればなるほど、高額な費用が必要がかかります。定期的な掃除を自分で行ったり、汚れがひどくなる前に水道業者へのメンテナンスを依頼したりするのがおすすめです。
この記事では、汚水桝の掃除について、自分で行う際の手順や注意点、水道業者に依頼した場合の費用相場をくわしく解説しました。
汚水桝の掃除を定期的に行っておけば、排水が逆流してきたり汚水桝から水が溢れたりなどのトラブルを未然に防げます。汚水桝は自分でもメンテナンスできる作りになっているため、半年に1回ほどのペースで掃除を行い、なるべくきれいな状態を保ちましょう。
また、汚れの少ないきれいな汚水桝の状態をキープするには、日頃の排水口の使い方も重要です。ゴミ取りネットを活用したり油分を吸い取ってから食器や調理器具を洗ったりすれば、排水管や汚水桝にも汚れが付着しにくくなります。
長年放置してしまった場合など、汚水桝の掃除を自分でするのが難しい場合は、水道業者への依頼を検討してください。自分で行うよりも費用はかかりますが、プロにメンテナンスしてもらうことできれいな排水管を維持でき、トラブルも起こりにくくなるでしょう。
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