断水は水道に水がきていない状態を指します。水が出てこないだけで排水に影響はありません。そのため、レバーを引いて流すよりも少しだけ手間はかかりますが、排水管に問題がなければ次の方法でトイレを使用できます。
一般的なトイレは、使用後にタンクに貯めてある水を一気に流すことで排水しています。排水したら自動的に水道から水が補充され、タンクがいっぱいの状態に戻ります。断水の状態では水道から水が補充されませんが、一定量の水を流すと水圧でトイレの水が流れます。そのため、水を流せる環境さえ整えれば、トイレを使用できます。
用意するアイテムは、トイレのタンクの役割を担うバケツと水です。バケツに水を入れて、その水を便器に直接流し込むことで排せつ物を処理できます。このとき汚れた水の使用は避けましょう。工事などでの断水であれば、事前にお風呂に水を張っておくなどの対策をしておくと安心です。
トイレを流す手順は非常に簡単です。通常はタンクから水が流れますが、バケツで行う場合はどうしても水が飛び散ります。そのため、汚れた水が床に飛んでも大丈夫なようにトイレの周りに新聞紙や雑巾を敷き、床を保護します。清潔さを保つため、定期的に取り替えるとよいでしょう。また、トイレのオート機能は切り、便座・ふたを上げたままにします。
次に、バケツ1杯分の水(5〜8リットル)を便器の中に一気に流し入れます。便器の中心をめがけて、勢いをつけて短時間で水を入れます。高い位置から流し入れると水が飛ぶので、低い位置から一気に流し入れるイメージで行うことが大切です。また、コンセント部分に水がかからないように注意しましょう。一回の作業で排せつ物が流れなかった場合は再び水を流し入れます。
バケツの水を使って排せつ物を流したら、臭いを防止するためにバケツ半分の水(3〜4リットル)を便器内に流し込みます。臭い防止の段階では勢いをつける必要はないので、静かに水を注ぎましょう。
その後、断水が続き、同じようにトイレの水を何度も流さなければならなくなった場合、2〜3回に一度は多めの水(10〜12リットル)をトイレに流してください。これは水流の不足によって排水管の途中で排せつ物がつまるのを避けるためです。
なお、タンクに水を入れて流そうとする方もいますが、この方法は推奨されていません。通常、トイレを流すには、タンクの中にある水だけではなく給水された水も使われています。そのため、タンク内に水を入れただけでは洗浄に必要な水が足りず、つまりの原因になってしまう可能性があります。
また、タンクの周りに取り付けられている電気部品に水がかかると故障してしまうので、断水時にトイレを流すときはタンクではなく、便器内に水を流し入れましょう。
また、お風呂の残り水を使うことも推奨されていません。髪の毛などのゴミがつまる恐れがあります。どうしても使わなければいけない場合は、ネットなどで汚れを取り除いてから使用するようにしましょう。
以上の方法で、断水の時でもトイレの水を流すことができます。しかし、トイレの種類によっては別の手順になる可能性があるので、事前に取扱説明書を読み、問題がないことを確認してください。
断水時にトイレを流す方法を紹介しましたが、下水道や排水管が正常に機能していない場合はトイレを流してはいけません。
たとえば、下水道の被災が挙げられます。地震などの自然災害が原因で断水したケースでは、下水処理場の損壊、道路内の排水管の破損、液状化によるマンホールの浮上、排水管のつまりなど、下水道がダメージを受けている可能性が考えられます。
このような状況でトイレを流してしまうと、便器から汚水が溢れたり逆流したりするかもしれません。
排水管が詰まってしまうと復旧に時間がかかり、修理費用がかかってしまうでしょう。また、汚水が漏れ、被害が拡大してしまう恐れもあります。これらのトラブルを避けるためにも、地震などの自然災害で断水が生じた際はトイレに水を流さないように心がけてください。
加えて、浄化槽のトラブルで断水している場合は、浄化槽のチェックを第一に考えましょう。浄化槽が破損していないか、傾いていないか、汚水が漏れていないか、電気系統のトラブルが起きていないかを確認し、異常を見つけたらトイレを流さないようにし、修理業者に相談することをおすすめします。
この他にも、自治体からの要請があった場合もトイレを流してはいけません。トイレに水を流し入れて、音や流れ方に違和感があった場合も同様です。すぐに作業を中断して他の方法を模索しましょう。
貯水槽清掃や水道工事などによる断水であれば、ホテルに泊まるなどの対策がありますが、災害による断水は外にトイレを探しに行くということも難しいでしょう。また、宿泊施設を利用できない場合も考えられます。そこで、水を流せない状況でトイレに行きたくなった場合に活用できるトイレの代用品について紹介します。
断水時のトイレの代用品として優れているアイテムが「携帯トイレ」です。携帯トイレは、袋と凝固剤がセットになった製品で、自宅に設置されている洋式トイレに袋をかぶせて、凝固剤で排せつ物を処理する仕組みになっています。
排せつ物に凝固剤をかけて瞬時に固めることで、臭いや雑菌の繁殖を抑えられます。使用後はそのまま可燃ごみとして捨てられるため、非常に手軽です。ただし、臭いや凝固剤が漏れないようにゴミ袋の口をしっかりと縛ってから捨てるようにしましょう。
災害用トイレとしてホームセンターやネットショップなどで販売されていますが、自分で作ることもできます。大きめのゴミ袋を便座にかぶせ、凝固剤の代わりに刻んだ新聞紙やおむつ、ペットシート、猫砂を使って排せつ物を処理します。
携帯トイレを用意できなかったときや、携帯トイレの備蓄がなくなってしまったときの代替案として覚えておくとよいでしょう。
袋を使った簡易トイレも断水時に活躍する製品のひとつです。簡易トイレは、凝固剤、排せつ用の袋、箱がセットになったもので、ホームセンターやネットショップなどで災害用トイレとして販売されています。
簡易トイレは携帯トイレとは違い、それ自体が便器の代わりになるため、自宅に洋式トイレが設置されていなくても使用できます。自然災害でトイレが壊れて使えない、避難所などでトイレそのものが足りないといった場合には簡易トイレが便利です。このような場合に備えて、日ごろから簡易トイレを備蓄して断水に備えておくことをおすすめします。
段ボールを使用した簡易トイレもトイレの代替品として使用できます。市販されている製品もありますが、ここでは自作する方法を紹介します。
まず、大きなダンボールと、そのダンボールにすっぽり入る大きさのダンボールを用意して、それぞれ組み立てます。大きいダンボールに小さいダンボールを乗せて、マジックで型をとります。そのラインに従って切り抜くと、小さなダンボールがすっぽり入る穴が開くでしょう。
このままでは強度が足りず座れないので、小さなダンボールを入れた状態のまま隙間に段ボール板を詰めて固定します。これで便器の代替部分の出来上がりです。
その後は携帯トイレと同じように袋を二重にしてかぶせ、中に破いた新聞紙など凝固剤の代わりになるものを入れます。これで、段ボールを使用した簡易トイレの完成です。
段ボールを使用した簡易トイレは、家にあるもので簡単に作れるため非常に手軽です。防災訓練の一環として、自分に合った高さや形に作れるように事前に練習しておくのもよいでしょう。
トイレが流せないからと排せつを我慢することは心身に悪影響を及ぼしかねません。これらの代用品を使用して、断水を乗り切りましょう。
断水後はトイレが使えるようになって一安心ですが、注意点もあります。ここでは断水後に気を付けたいことを解説しながら水を使い始める手順について紹介します。
工事や被災の影響で公共の排水管を流れる濁った水が自宅の水道管に入らないように、断水時は止水栓(元栓)を閉めておき、断水後に開ける方法が一般的です。戸建住宅の場合は宅地内の地面に止水栓が設置されています。アパートやマンションといった集合住宅であれば、玄関横に止水栓があるでしょう。
止水栓を開く際は、止水栓がしまっていることを確認してから、ゆっくりと開きます。しかし、断水が復旧した直後だと、断水中に給水管の中に溜まった空気が復旧後の水に押し流されて器具に供給され、破損してしまう「エアーハンマー現象」に見舞われる可能性があります。
空気だけでなく砂などの異物が給水管に入ってしまったり、錆などが水に混ざってしまったりするケースもあるので、トラブルが起きるかどうかを確認しながらゆっくり開けたり、復旧してから時間をおいて止水栓を開けたりしましょう。
次に、台所や洗面所など水周りの蛇口をゆっくりと開きます。何も意識せずに蛇口を開けてしまうと、エアーハンマー現象によって蛇口に衝撃が生じ、部品などが破損してしまう恐れがあります。それを防ぐためにも、蛇口はゆっくりと開きましょう。
蛇口を開いたら、5分ほど水を流したままにします。これによって給水管に入った空気を抜くことができます。
断水後に出る水は安全ではない可能性があるので、蛇口をゆっくりと開いたら水の臭いと色をチェックしましょう。たとえば、水が赤っぽく濁っていたら錆が含まれている可能性が高く、水道管の劣化や鉄が溶け出している状態が疑われます。水を出し続けて数分後に透明になれば問題ありません。
また、水に空気が混ざった場合や水道管に水圧がかかった場合に、水が白く濁ることがあります。この症状は主に水道工事で断水したときに発生しますが、健康への影響は特にありません。水を出し続けると次第に透明になっていきます。
水から鉄錆の臭いがした場合、水道管の鉄成分が水に溶けてしまっている可能性が高いと言えます。少量でしたら口に入れても問題ありませんが、長期間続くようであれば何かしらのトラブルが発生していると考えられるので、原因を探るようにしましょう。
水を5分以上流し続けても上記のような水の異常がみられる場合は、給水管に問題が起きている可能性があります。我慢して使い続けるのはやめて、修理を依頼しましょう。
戸建て住宅の場合、宅地内の配水管が原因であれば、水道工事業者に点検や修理を依頼しましょう。特に異常が見られなければ、宅地外の配水管が原因です。水道局に連絡して、配水管の調査や洗浄、取り換えなどの対応をしてもらいます。
マンションなど賃貸物件の場合は、管理会社に連絡しましょう。宅地内に原因があれば、配水管の調査や取り替え、受水槽の洗浄、修理、交換などの対応をしてもらえます。修理には時間がかかる場合もあるため、水に異常を感じたら早めの対応を心がけてください。
断水時にトイレを流す方法、トイレの代用品、断水後の注意について解説しました。断水時は、バケツを使用することでトイレを流すことができますが、下水道の被災などでトイレを流せない場合もあるため、携帯トイレなどトイレの代用品になるものを備蓄しておくと安心です。
また、断水後も油断せず、慎重に水を流し、水に異常がないことを確認してください。トラブルが発生した場合は、水道関係事業者に連絡して解決してもらうとよいでしょう。
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