そもそも、日本で和式トイレと洋式トイレの両方が使われている背景にはどういった歴史があるのでしょうか。まずは、和式トイレの歴史や現在の製造の状況について簡単に解説します。
中世ヨーロッパの城に腰掛式のトイレがあったのに対し、鎌倉時代の日本では汲み取り式のトイレが普及しました。おそらく現在の和式トイレと同様にまたがって使っていたと考えられています。トイレによって溜めた排泄物は畑の肥料として使われ、有効活用されることもありました。
江戸時代になると汲み取り式トイレはさらに発展を遂げます。排泄物も肥料目的で売買されるようになり、利用がより活発になりました。
従来の便器は木製でしたが、明治時代になると現在のような陶器製の便器を持つ和式トイレも登場しました。ほとんどのトイレは従来の汲み取り式でしたが、1923年の関東大震災の後から下水道などの整備が進み、水洗トイレが普及するようになります。
洋式トイレは文明開化に伴い明治時代の日本にすでに導入され、外国人の利用が多い建物を中心に設置されていましたが、普及率は低い状態でした。しかし、1959年に日本住宅公団が洋式トイレを採用し、日本社会に洋式トイレが普及しはじめます。そして、1970年代後半には洋式トイレと和式トイレのシェアが逆転しました。
その後、日本人の生活スタイルの変化や温水洗浄機能つきの洋式トイレの普及に伴って、和式トイレのシェアは減少していきました。和式トイレのシェアは1980年代後半の時点で20%を下回り、2000年代には5%を下回っています。現在では日本で新しく生産されるトイレのほとんどが洋式トイレという状況です。
新規出荷数が少なくなっている和式トイレですが、洋式トイレと比較すると以下のメリットもあります。
洋式トイレへのリフォームを検討する前に、改めて和式トイレのメリットも確認しておきましょう。
和式トイレは洋式トイレと異なり、肌が便器に触れないため、衛生的だと感じる方もいます。実際、公共の洋式トイレだと、誰が使ったか分からないため座るのに抵抗を感じ、意識的に和式トイレを使う方もいるようです。
誰が使ったのか分かる家庭のトイレであっても、便座を拭いてから使ったり、便座シートを使ったりする方もいます。お尻と接触する便座の衛生が気になる方にとって、肌が便器に触れない和式トイレの特徴はメリットの一つでしょう。
和式トイレは洋式トイレと比較して安価に購入できます。洋式トイレの費用相場が割引なしだと約10万円~40万円であるのに対し、和式トイレは3万円台から購入できる商品もあります。
和式トイレの方が使用する水の量が多く水道代がかかりやすいのでランニングコストは高めですが、初期費用を抑えられることで助かる場面もあるでしょう。
洋式トイレに比べ、和式トイレはトイレつまりが起きにくいメリットがあります。シンプルな構造の和式トイレは異物を落としても気付きやすいため、落下物によるつまりのリスクを抑えられます。
また、洋式トイレに比べて流れる水量が多いため、多少排泄物が多くても勢いよく流せます。排水管が比較的太いのも詰まりにくい理由の一つです。
トイレつまりは起きてしまうと対応に手間取ることもあるトラブルです。和式トイレであることによって、未然にトイレつまりを防ぎやすくなるのは大きなメリットと言えます。
和式トイレは便器の構造がシンプルなので、掃除がしやすいのも魅力です。洋式トイレだと便器の裏側が狭くなっていたり、形状が複雑だったりして掃除しにくいこともありますが、和式トイレなら手を伸ばしにくい箇所もありません。
ついでに床の掃除をしても、ほこり程度であればそのまま便器に流せるので手軽です。便器のメンテナンスのしやすさに注目すれば、和式トイレにもメリットがあります。
和式トイレでは便器を跨いで背筋を伸ばし膝を曲げるのでお腹に力が入れやすく、排便しやすい姿勢を取ることができます。洋式トイレでは上手く力むことができないと感じる方でも、和式トイレなら排便しやすいと感じるかもしれません。
日常的に和式トイレを使って排便の仕方が馴染んでいる方や、便秘気味の方にはメリットになりえる点です。
メリットも多い和式トイレですが、以下のようなデメリットもあります。
自宅のトイレが和式トイレである場合は、デメリットを意識したうえでそのまま使い続けるか検討しましょう。ここからは和式トイレのデメリットを詳しく解説します。
和式トイレはお尻から便器までの空間が開いており、洋式トイレよりも開放的な形状をしているため、水や汚れがはねやすい特徴があります。そのため、便器の周囲の床や壁が汚れて不衛生な状態になりやすく、掃除に手間がかかるでしょう。
汚れが周囲にはねてしまうと、ニオイの原因にもなるので、快適さも下がってしまいます。快適さを保つためには洋式のトイレよりもこまめに周囲を掃除する必要があります。
便器自体は和式の方が洋式よりも掃除しやすいですが、周囲が汚れやすいのでは結局手間が大きいと感じる方もいるでしょう。
和式トイレは使用する時に足腰に負担のかかる姿勢をとらなければなりません。そのため、膝などに痛みを抱える高齢者や、かがむ姿勢が取りにくい妊婦には使いづらいトイレです。
また、和式トイレに慣れていない子どもの中には、排便をする時の姿勢を取るだけの筋肉がついておらず、うまく使えない子どももいます。
高齢者、妊婦、子どもなどさまざまなライフステージの方が暮らす家庭では、和式トイレを使いにくいと感じるときも多いかもしれません。
和式トイレはつまりが発生しにくいトイレではありますが、万一トラブルが発生すると大規模な修理が必要になることがあります。
和式トイレは洋式トイレと異なり床へ埋め込まれているので、つまったり、落下物が取れない状態になると、一度取り壊さなければならなくなる場合もあります。
大規模な修理が必要になると費用がかさむほか、トイレが使えない時間が長く不便してしまいます。トラブル時のリスクを考えたうえで和式トイレを使うか検討した方がよいでしょう。
和式トイレの普及率が下がり、使用する機会が減ったことによって、使用方法が分からない方も増えてきました。普段家族で使用するのであれば使い方を教えればよいですが、来客があった時などは客人が困ることもあるかもしれません。
トイレの使い方が分からないと、トイレを我慢してしまったり、誤った使い方をしてケガや汚れを発生させてしまいます。来客がある家庭であれば、使用方法が分からない人のことも考慮した上で、和式トイレを使い続けるか決めた方がよいでしょう。
和式トイレを洋式トイレにリフォームするメリットは複数あります。メリットがリフォーム費用に対して見合っていると感じれば、リフォームに踏み切るのもおすすめです。ここからは洋式トイレにリフォームするメリットを詳しく解説します。
和式トイレを洋式トイレにリフォームすると、トイレを使うときの身体的な負担を軽減できます。便器をまたいでしゃがむ姿勢を取らなければならなかったのが、腰掛けるだけでよくなるので、楽な姿勢でトイレを使えます。
特に、高齢者や妊婦は洋式トイレの方が楽だと感じやすいでしょう。和式トイレと異なり、子どもが誤って便器に落ちてしまう事故も発生しにくくなります。
これから先、ご自身や家族が年を取っていくことを考えれば、今のうちに洋式トイレへリフォームしておくと将来の負担軽減につながります。身体的な負担が軽減されてトイレが使いやすくなるのは長い目で見ると大きなメリットです。
洋式トイレへのリフォームでは節水効果も期待できます。洋式トイレでは和式トイレに比べて流す水の量を大幅に節約できるからです。和式トイレで使用する水量は1回あたり20Lほどですが、最新の洋式トイレでは4Lほどで流せるものもあります。
家族4人が1日5回トイレを使うとしたら、単純計算で年間116,800Lの節水につながります。水道代の節約もできるので、長い目で見ればお得にトイレを使えます。
洋式トイレは和式トイレに比べると水や汚れのはねが発生しにくいため、リフォームした方が衛生状態を保ちやすくなります。
洋式化すると便器の掃除は少し複雑になりますが、周囲の空間を掃除する手間は減り、ニオイも気になりにくくなるでしょう。
また、洋式トイレには自動洗浄機能付きの製品もあるため、選択する製品によっては便器の掃除の手間も省きながらきれいな状態を保つことができます。日常的に使うものだけに、あまり手間をかけずに衛生状態が保てるのは大きなメリットです。
トイレリフォームを検討すると費用が気になる方も多いのではないでしょうか。ここからは和式トイレを洋式トイレにリフォームする費用の目安と、工事の内容をご紹介します。
和式トイレから洋式トイレにリフォームする総額費用の目安は約25万円~60万円です。費用を大きく変動させる要素は新しい洋式トイレ本体の価格です。
製品によって価格に幅があるので、どの製品を選ぶかによって費用総額が変わります。高機能で省スペースのトイレは費用が高くなる傾向があります。
また、バリアフリー化や手すりの設置などオプションを希望する場合は追加の費用が必要です。
洋式トイレへリフォームする際の工事内容とそれぞれの費用目安は以下の通りです。
温水洗浄便座など電気を必要とする機能がついたトイレの場合は、さらに約10,000~20,000円ほどの電気工事が必要です。
また、手洗器がついていないタイプの洋式トイレを選択した場合には、約50,000円ほどの費用を目安に手洗器を設置する工事もできます。
リフォームを検討するにあたって、どのような洋式トイレを選べばよいか悩む方も多いかもしれません。洋式トイレには大きく分けて以下の3種類があります。
それぞれにメリットが異なるため、自宅に合ったタイプの洋式トイレを選ぶことが重要です。ここからはそれぞれのタイプについて、メリットとおすすめの製品をご紹介します。
組み合わせトイレは便座・便器と水を溜めるタンク部分が分かれているトイレです。奥行きがあるためスペースを取り、複雑な形状なので掃除がしにくいデメリットがあります。しかし、本体の価格が安く手洗い器も設置できるので、初期費用を抑えやすいという大きなメリットもあります。
TOTOのCS215BPR+SH215BAS ピュアレストMR マンション用リモデル便器はタンクをコンパクトし、あまりスペースの取れないトイレ空間であっても圧迫感が軽減される商品です。比較的掃除もしやすく、組み合わせトイレの弱点をある程度カバーしている商品といえます。水の使用量は大が4.8L、小が3.6Lと節水性能も良好です。手洗い器も付属しており、購入しやすい価格でもあります。
TOTOのCS510BM+SS511BABFS コンパクトリモデル便器 コーナータイプはトイレ空間の隅に沿うかたちで設置できる省スペースの組み合わせトイレです。元々和式トイレが設置されていた空間が狭くても、スペースを有効活用しながら組み合わせトイレを設置できます。水の使用量は大小ともに8Lと節水性能はあまり高くありませんが、スペース不足に悩む方にはおすすめの商品です。
一体型トイレは、便器・便座とタンクが一体になっているトイレです。組み合わせトイレと比べて費用は高くなるものの、掃除が楽で見た目もスタイリッシュです。タンクレストイレと比較して費用を抑えられるため、性能と費用のバランスが良いタイプと言えます。
TOTOのZJ1 CES9151 ウォシュレット一体型便器はウォシュレット機能が付き、節水性能も良好なコストパフォーマンスの高い一体型トイレです。汚れが付きにくく落ちやすいTOTOの独自技術セフィオンテクトが使われており、掃除しやすい独自形状をしています。毎日のメンテナンスもしやすいでしょう。
TOTOの同シリーズZJ1 CES9150 ウォシュレット一体型便器は、手洗い器がないタイプです。手洗い器がない分、ローシルエットで狭い空間であっても圧迫感がありません。トイレに手洗い器が付属してなくても構わない方であれば、検討をおすすめしたい商品です。
タンクレストイレはタンクに水を溜めて流すのではなく、水道で直接流すタイプのトイレです。タンクがないため、省スペースで設置ができ、掃除も簡単です。本体価格は高い傾向にありますが、各メーカーの主力商品となっているため機能が充実した製品が多く快適に使えます。
TOTOのネオレストはタンクレストイレの中でも人気が集まる商品で、自動除菌機能や汚れ・においを防ぐ機能などが充実しており便利かつ快適に使えます。TOTOの独自技術セフィオンテクトを搭載して汚れにくく、掃除しやすい形状でもあるので日々のメンテナンスも楽です。費用はやや高くなるものの、快適さを優先するならおすすめの商品です。
パナソニックのアラウーノ S160は厳選されたベーシックな機能が搭載されたタンクレストイレです。水垢をはじき、汚れがつきにくい素材で作られ、汚れが入る隙間がほとんどないなど、汚れにくさを実現するための配慮がしっかりされています。泡と水流で洗浄する機能も付いているため、お手入れしやすいでしょう。比較的お手頃な価格でタンクレストイレを探している方におすすめです。
お得にトイレのリフォームをするなら、補助金や助成金などの情報は見逃せません。条件を満たしていれば、費用補助が受けられるため、負担を抑えながらトイレリフォームができます。ここからは、リフォームにあたって知っておきたいお得な情報を解説します。
住んでいる自治体によっては、和式トイレの洋式化リフォームに補助金や助成金が出る場合もあります。
例えば、東京都中野区では「自立支援住宅改修等給付事業」として、トイレの洋式化に必要な費用を90,000円を限度額として給付しています。給付の対象となるのは、「中野区内に住所があり、介護保険で要支援、要介護の認定をうけた65歳以上の方で、生計中心者の前年(1月から6月申請の場合は、前々年)の合計所得金額が200万円未満の方」です。
また、東京都足立区では、「住宅改良助成制度」として、和式トイレから洋式トイレへの変更に最大8万円の助成金を給付しています。この助成金は、65歳以上、または要支援認定・要介護認定を受けている方がいない世帯が対象です。
補助金の内容や条件は自治体によって異なるものの、条件が合えばお得に施工できる可能性があります。リフォームを依頼する前に、住んでいる自治体などの補助金がないか一度調べてみましょう。
要支援・要介護認定を受けている方が自宅に暮らしているのであれば、介護保険を利用して工事費用の負担額を抑えられます。介護保険とは、65歳以上の高齢者や、40~64歳の特定疾病患者の方で介護が必要になった方を社会全体で支える仕組みです。
介護保険を利用すれば、工事費用20万円までの7〜9割の補助を受けられます。補助額の割合は自己負担額によって変動します。
介護保険による補助を受けるためには着工前に申請する必要があるので、利用を検討している方は早めにケアマネージャーに相談しましょう。
今回は和式トイレのメリット・デメリットや洋式化のリフォームなどについて解説してきました。和式トイレにも良さはある一方で、さまざまな世代が暮らす家庭だと使いづらい部分があるのも事実です。将来を見越して、洋式トイレにメリットを感じるようであれば、リフォームするのもおすすめです。
洋式トイレの中には本体の価格が比較的安い製品もあり、費用を抑えられます。また、補助金・助成金や介護保険を活用すれば、さらに費用負担を抑えることも可能です。業者によっても工事費用が変動するため、相見積もりを取るなどして費用が高くなり過ぎず信頼できる業者を探しましょう。
イースマイルでは和式から洋式へのトイレリフォームも対応しています。実際に現場を見たうえで求める機能や予算などから最適な商品を選ぶお手伝いもいたしますのでお気軽にご相談ください。
Copyright©株式会社イースマイル【町の水道屋さん】.All Rights Reserved.