ボイラーからの水漏れに気づいたら、業者に依頼をする前に応急処置が必要です。応急処置をしないまま水漏れを放っておくと、床などに水が広がり、腐食が発生するからです。集合住宅の場合は、階下に浸水し他の人の財産を傷つけてしまうかもしれません。
水漏れ箇所を特定しておくと、後で業者に依頼する際にスムーズではありますが、時間がかかるようなら、応急処置を優先させましょう。応急処置の手順は以下の通りです。
ここからはボイラーから水漏れしている場合の応急処置について解説します。
水漏れの被害を食い止めるために、まずは水受けを用意しましょう。水が垂れてきている所に、バケツや洗面器などを用意して、床などに水が広がらないようにしてください。水漏れが壁の中などで発生している場合など水受けの用意が難しい場合は、そのまま次の手順に進みましょう。
水受けで水漏れの被害拡大を防いだら、次にボイラーの電源を切りましょう。水漏れが発生した状態でボイラーを運転させていると、水漏れの発生箇所によっては不完全燃焼や漏電が生じ、さらなるトラブルの原因になります。水漏れが発生しているうちはボイラーを使わず、業者が修理するのを待ちましょう。
次に止水栓または元栓を閉めましょう。止水栓や元栓を閉めることによって、ボイラーに供給される水の流れを止められるので、さらなる水漏れの発生を防げます。止水栓は多くの場合ボイラーに給水する配管の途中に付いています。ボイラーの周囲を探してみましょう。ハンドル式のものはハンドルを右回りに回すと閉められます。
止水栓が見つからなかったり、固くて閉められなかったりするときは、元栓を閉めて水を止めましょう。集合住宅の場合、元栓は玄関の側の鉄扉の中にあります。水道メーターの近くにあるハンドルが元栓です。
一戸建ての場合は、元栓が地中に設置されている場合もあります。水道と書かれた金属の蓋があれば開けてみましょう。中に水道メーターと元栓があります。集合住宅の場合も一戸建ての場合も、ハンドルを回すと元栓を閉められます。元栓を閉めると、家の中の水道が全て使えなくなるため、元栓を閉めた場合は早めに業者に来てもらうようにしましょう。
賃貸住宅の場合は、応急処置の後、管理会社に連絡して修理などの対応してもらいましょう。賃貸住宅では、ボイラーなどの住宅設備は貸主の持ち物なので、基本的に管理会社や大家などに知らせないまま勝手に修理工事をしてはいけません。また、不注意や故意で設備を故障させたのでなければ、多くの場合は管理会社や大家が修理費用を負担してくれます。
一方持ち家の場合は、ボイラーなどの設備を含め自分の持ち物です。そのため、自分で修理業者を手配して構いません。応急処置をきちんとしてから、修理を依頼する業者を探しましょう。
灯油ボイラーが水漏れする原因はさまざまで、水漏れ箇所によって原因は異なります。灯油ボイラーで水漏れしやすい箇所と原因は以下の通りです。
ここからはそれぞれの箇所の水漏れについて原因を解説します。
ボイラーの水漏れは、ボイラー本体の熱交換器の導管にピンホールと呼ばれる小さな穴が開くことが原因である場合もあります。ピンホールが開くと、水漏れが発生するほか、ボイラー内に水が広がり故障や漏電が発生する可能性もあります。
ピンホールは10~20年と長期にわたり使用されたボイラーに発生しやすいトラブルです。水圧による負荷や気泡に長年晒された銅管の内部が摩耗することによってピンホールは発生します。
ボイラーを含め、機器にはメーカーによる設計標準使用期間が定められているものがあります。設計標準使用期間とは、安全上問題なく使用できる期間です。多くの灯油ボイラーではおおむね10年程度に定められています。10年を過ぎるとピンホールなどのトラブルが発生しやすくなると考えておきましょう。
配管接合部からの水漏れは接合部の緩みや固着が原因である場合もあります。接合部の緩みは、ナットの締め付けが緩むことによって起こります。固着はパッキンが経年劣化によって油分が抜けて固くなってしまう現象です。パッキンの固着が起きると、接合部に隙間が発生することがあり、水漏れにつながります。
安全弁(逃し弁)や減圧弁などの部品が経年劣化することによっても水漏れは発生します。安全弁とは、ボイラーの内部で圧力が高くなり過ぎないよう、圧力を逃がす部品です。減圧弁は、ボイラーに給水する時の水道の圧力を減らす部品です。
安全弁も減圧弁も負担がかかりやすい部品なので、ボイラー本体よりも先にトラブルが発生することがあります。安全弁はボイラー内部の圧力を調節するために熱湯を排出するので、ボイラーを使っている時に安全弁からお湯が出ているのは故障ではありません。
ボイラーの電源を切って1時間ほど経っても安全弁から水漏れしている場合はどこかで故障が発生している可能性があります。必ずしも安全弁が故障しているとは限りませんが、安全弁から水漏れしている旨を業者に伝えてみましょう。
配管からの水漏れは、配管そのものの損傷により発生します。配管はなんらかの衝撃によって損傷するケースがあるほか、寒冷地では凍結が原因になることもあります。配管の中に水がある状態で凍結すると、水が氷になる過程で体積が膨らみ、配管に内側から力をかけてしまうからです。
壁の中の配管に水漏れがあると、気づかないうちに浸水や腐食が進んでいることもあります。壁に水シミができていたり、水道代が不自然に高くなったりした場合は、壁の中の配管が損傷していないか疑ってみましょう。
ボイラーの先にある混合水栓の逆止弁の故障によって、水が逆流し水漏れしている可能性もあります。家の蛇口には、お湯や水の逆流を防ぐために逆止弁が付いていますが、逆止弁が故障していると、蛇口から出るはずのお湯や水がボイラーに向けて逆流してしまいます。
結果、逆流した水が安全弁から漏れることがありますが、故障箇所はあくまで混合水栓の逆止弁です。止水栓を閉めた状態でも安全弁から水漏れしているなら、故障しているのは混合水栓かもしれません。
水漏れの修理は原因に応じた方法で行います。それぞれの修理方法によって、必要な部品や作業内容が変わるため、費用相場も異なります。原因ごとの修理方法はおおむね以下の通りです。
ここからはそれぞれの修理方法と費用相場を解説します。余裕があればどこから水漏れしているのか確認しつつ読んでみてください。
経年劣化が原因の場合は、他の部品も同様に劣化している可能性があります。トラブルが発生した部品だけ交換しても、すぐに他の部品も不調を起こすかもしれません。そのため、トラブルが発生した個々の部品を交換するよりも、本体ごと交換した方が費用が安く済む場合もあります。本体を交換する場合の費用相場は15万~30万円ほどです。
灯油ボイラーの耐用年数はおおむね10年ほどです。使い方によってはより短い年数で寿命を迎えることもあります。10年以上使っていたり、業者に交換をすすめられた場合は交換を検討してみましょう。交換する機種によっては補助金が貰える場合もあるので、費用負担を抑えたうえで交換ができます。
接合部のナットが緩んでいるだけであれば、ナットを締め直すことで水漏れが解決することもあります。ナットはモンキーレンチやスパナで締められます。
ナットを締めても水漏れが直らない場合や、パッキンが劣化している場合は、部品を交換する必要があります。自分で修理するなら数百円の部品代だけで済むこともありますが、工具を揃えたり、適切な大きさの部品を用意して作業したりするのは手間です。業者に依頼すると、部品代に出張費用や作業費を合わせて5,000円~10,000円ほどが費用相場です。
配管が損傷している場合は、損傷個所だけを修理するのではなく、配管を交換しないと根本的には直りません。配管交換の費用相場は50,000円~60,000円ほどで、交換する配管が長くなるほど費用は高くなります。また、壁の中の配管など、作業が難しい場所の配管は交換費用が高くなることがあります。詳しい金額は見積もりを取って確認してみましょう。
安全弁と減圧弁はどちらも負荷がかかりやすい部品なので、どちらかが原因でもう一方が水漏れすることもあります。耐用年数がほぼ同じで、同じように劣化する部品なので、どちらかが故障したなら基本的に同時に交換するのがおすすめです。安全弁と減圧弁をセットで交換する場合の費用相場は20,000円~50,000円程度です。
混合水栓の逆止弁が故障して逆流が発生している場合は、ボイラー側ではなく混合水栓の交換が必要です。どこの混合水栓が故障しているのかにより、費用相場は異なります。キッチンの混合水栓は30,000円~70,000円、浴室の混合水栓は20,000円~50,000円ほどが相場です。
ボイラーを交換するべきか修理するべきか悩む方もいるでしょう。どちらにするべきかはボイラーの状態によっても異なります。ボイラーは長く使う設備なので、なるべく長い目で見て判断するのがおすすめです。ここからは、交換と修理のどちらにするか迷った際の判断基準を紹介します。
ボイラーを交換するかどうかは使用年数で判断するのがおすすめです。灯油ボイラーの耐用年数はおおむね10年ほどで、10年以上使用しているとトラブルが発生しやすくなります。
そのため、故障した箇所を修理しても、またすぐに他の箇所が故障しやすく、修理費用がかさんでしまいます。将来かかる修理費用の総額を考えれば、交換した方がお得なケースもあるので、長い間使っているボイラーであれば交換も検討しましょう。
また、10年以上使用しているボイラーだと、メーカーが部品を保存している期間が切れて、修理に必要な部品が確保できないこともあります。部品がないと修理は難しいので、交換するしかない場合もあるでしょう。
修理と交換のどちらにするか迷ったら、業者と相談して決めるのもおすすめです。ボイラーの状態は一般の方にはなかなか分かりませんが、プロから見れば交換した方が良い状態だと一目瞭然である可能性もあります。修理と交換でそれぞれどのくらい費用がかかるか目安も教えてもらえるので、気になることは業者に聞いてみましょう。
ボイラーの本体を交換する場合は、エコキュートへ交換することも一つの選択肢です。エコキュートとは、ヒートポンプ技術によって、空気の熱を使いお湯を沸かす給湯システムのことです。効率的にお湯を沸かすため、省エネ性能が高く、光熱費を抑えられます。
初期費用は高いですが、月々のランニングコストを抑えられるので、長い目で見ればお得な給湯器です。また、自治体によっては補助金もあるため、費用負担を軽減しながら自宅に導入できます。修理費用や交換費用だけでなく、月々の光熱費も考慮に入れながら、ボイラーの交換について検討してみましょう。
ボイラーから水漏れが発生していると慌ててしまうものですが、被害を広げないようにまずは応急処置をすることが大切です。水受けを用意したり、止水栓を閉めたりして漏れた水が広がらないようにしましょう。それから落ち着いて修理の依頼を検討してください。
修理の費用相場は水漏れの原因によっても異なります。余裕があれば、水漏れしている箇所を特定しておきましょう。水漏れ箇所が分かっていれば、業者への依頼もスムーズに済みます。
ボイラーの水漏れを放っておくと、漏電や不完全燃焼などさらなるトラブルが発生する可能性があるため、早め早めの対応が肝心です。賃貸住宅の場合はまず管理会社に連絡をし、持ち家の場合は信頼できる業者を探してください。
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